2.8.2001

No.0082

ミュ−タンス コントロ−ル

 “歯科なんでもコラム”をご愛読の皆さんは、【プラ−ク コントロ−ル】という言葉は既にご承知の方々も多いと思いますが、【ミュ−タンス コントロール】というのをご存じですか?。

 そもそも「ミュ−タンス(菌)」は虫歯の原因となる[歯垢]の素になる細菌で「虫歯菌」ともいわれているものです。[歯垢]は食べかすではなく、細菌の集団です。この、ねばねばの歯垢の中に糖分が入ると、歯を溶かす酸(乳酸)を作り出します。
 虫歯予防に歯ブラシが大切なのはこの歯垢を取り除くことにあります。これがいわゆる【プラ−ク コントロ−ル】といわれるものです。
 さて、[歯垢]の素になる「ミュ−タンス(菌)」はどこからくるのでしょうか? 細菌学の研究によると口や腸の中に住み着いている細菌(常在菌)は生まれてから数日のうちに、赤ちゃんの口から体の中に入り込みます。(体の中に入った細菌は、よい働きをするものも多いので誤解なく!)「ミュ−タンス(菌)」は歯の表面にしか住み着かないので乳歯が生える生後1才〜3才までの間に母親から感染すると言われています。 「ミュ−タンス(菌)」は一度住み着くと、そこをほかの菌に譲ることがありません。 一度感染すると、歯ブラシでは容易に取り除くことができず、最後の歯が抜け落ちるまでなくなりません。歯のあるほとんどの人の口の中には「ミュ−タンス(菌)」が住んでいるので、あまり神経質になる必要はありませんが、問題になるのはその数なのです。「ミュ−タンス(菌)」の多い人は虫歯になりやすいということになります。(虫歯のかかりやすさは「ミュ−タンス(菌)」の数だけでは決められないのですが・・)

 最近、歯科の話題のなかで、【ミュ−タンス コントロ−ル】という言葉を耳にするようになりました。言葉のとうり、口の中のミュ−タンス菌の数を減らしたり、菌の性質を変えることができれば、という考え方です。
 虫歯予防が盛んなフィンランドのトゥルク大学とユリビエスカ保健所の共同研究では、100%キシリト−ルガムの長期摂取(1日3回3ヶ月以上続けること)により「ミュ−タンス(菌)」の質を改善できる(歯垢が出来にくくなる。ねばねば感がなくなる)と報告しています。
 フッ素(抗酵素作用、抗菌作用)や洗口剤(グルコン酸クロルヘキシジン)の使用、超音波歯ブラシの利用により、菌数がコントロ−ルできるともいわれています。

 母親の「ミュ−タンス(菌)」のレベルを下げることができれば、母子感染の可能性を少しでも減らすこともできるのではないかと考えられているのです。
 妊娠中に歯科へかかるのはなるべく避けたいと思われるようですが、この時期こそ、出産に備えて、口の衛生には特に気を配りたいものです。

 子供の虫歯予防【ミュ−タンスコントロ−ル】は、生まれる前から始めることができるのです。驚きですね!



澤田先生

 

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