1.18.2001

No.0079

貴方は、【かかりつけ医】をお持ちですか?

 最近、『医療事故』や『医療従事者』の事件が、テレビや新聞のニュースで毎日のように報道されていますね。このことは、医療への信頼を無くさせる嫌なことです。もし、突然御自身や又は御家族が病気やケガにみまわれた時「いったい何処の病院へ行けば、安心して診てもらえるのだろうか?」と不安感が募り、「藁をもすがりたい」思いの「藁」が見つけられない不安は計りしれません。

 実は、私の父も10年程前から重い肝臓病を患い、去年は3度も30キロも離れた東京都内の病院まで救急車で搬送しました。父の往診や急診を住まいの近所の医院へお願いしても、残念なことに良い対応は頂けず、先日父の容態が急変した際にも、ある医院では“居留守”まで使われたことがありました。搬送をお願いしたその都内の病院の先生は「お父さんの病態は専門分野でない先生には任せられないと思われるので私が責任を持って診させていただきます。すぐに119番へ連絡し、至急、救急車でいらして下さい。」とおっしゃって下さったので、距離の遠い病院ですが、それこそ「藁をもすがる思い」でお願いしました。応対の先生は父が病院に到着してからも適切な処置と入院手続きをして頂けたので、父も一命を取り留めることができました。

 私自身【歯科医】として【医療従事者】として、“患者さん”と「どの様にして接しどの様な医療サービスを提供しなければいけないのか?。」自問自答することがあります。《歯科なんでも掲示板》で読者の皆様からも、「どこか良い歯医者さんは、ありませんか?」という質問を頂くことがあります。ご返事をする側の我々、歯科医は「医院の環境、設備、スタッフや先生の接し方や態度、先生の歯科治療に対する技術、、、、、、、と様々な条件を挙げると切りがなく、最後は、歯科医と患者さんとは人間同志の信頼関係があれば多少の環境、設備などの物質的条件が欠けていてもよいのではないか?」と質問者にとっては奥歯に物がはさまったような返答になってしまいます。

 最近は、情報化社会で昨年、森首相が提言した【IT革命】で国民に広く情報を堤供するためにインターネットを使うことで、幅広い知識と研鑽を求めています。現在、医院、歯科医院のHPを作り、自院の特色をわかりやすく説明し、アピールすることで患者さん獲得に努力しております中で、患者さんがご自宅で医院の雰囲気や先生の専門分野が画像や説明でわかるようになってきました。又、疑問に思う治療内容や病気なども【掲示板】や【e-mail】で質問されれば、専門医が解答して下さり、患者さん自身の治療や悩んでおられる病気の正しい知識を得ることができます。

 では、インターネットを使い、医院のHPを見ただけで『その先生にかかろう!!』という決断と勇気が貴方には、ありますか?『医院は近い方が交通費がかからなくていいから、、、』という条件で受診されたり、口コミでと様々な理由がおありだと思います。 今月の14日の読売新聞の朝刊のウイークリーコラム『患者道指南』で、清水とよ子女史いわく、『昨今、患者から見て理不尽で非常識な対応をする医師であるならば、時には受診先を変える勇気も必要である』とし、また『患者の症状や要望を受け止め、、、、』とあり、結論として『【かかりつけ医】は近くなくてもいい、良医を探すための第1歩は、【常識を共有できる医師かどうかを見極めること】』と書いてありました。

 さて、医師にとっての【常識】とは、何でしょうか?。先ずは、患者さんが訴えるべきことを聞く耳を持つことが肝心であり、適格に理解しやすいように説明できる学識を持つことが大切ではないかと考える次第です。患者さんが初診で来院し、訴えを聞く事を専門用語で【主訴】といい、現病歴、既往歴、家族歴を問診することで、患者さんの健康状態や全身疾患との因果関係の有無を把握すべきなのですが、往々にして予約のない飛び入りの患者さんに十分な問診が多忙の時はできないのが現状です。
 しかし、【IT革命】と言われる中で我々、医療従事者はコンピューターの機械をうまく扱うことで人件費を削減したり、患者さんの待ち時間を短縮したりする。また、初診時に患者さんに十分、治療内容や治療方法を理解していただくには、患者さんご自身に鏡を持ってもらい、痛い歯や気になる歯を見ていただくより、画像を撮り、説明する方が理解しやすいし、治療前後の画像を見ればその箇所が完治したことも確認できます。
 最早、我々、医療従事者の【IT革命】とは、患者さんに情報を堤供し、治療に満足していただけるための武器となっていることを認識せざるおえません。

 ここで、【かかりつけ医】が認識すべきことは、『患者さん本位』ということです。医療は人間と人間がかかわりを持ち、信頼関係の元で病気に双方が戦って行かなければ、完治すべきものではありません。 【IT】という機械をうまく利用することが現代医療の進歩でもあり、これからの【かかりつけ医】としての信頼度、患者さん個人のデータの保存が不可欠となり、医師の技術の向上を問われる時代になってきました。

 私、個人として【かかりつけ医】を患者さん1人1人が持つべきであり、常識という言葉に襟を正して、【患者さんから学ぶ】という精神を忘れないで仕事をしていきたいと思っております。



山本先生

 

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