12.21.2000

No.0075

哺乳ビン授乳の注意点

 生まれたばかりの赤ちゃんはオッパイを必死になって吸います。本能的な行為ですが、実はこれが心身の発育にとって非常に重要です。
 生まれたばかりの赤ちゃんの顔の下部の発育はオッパイを吸う行為によって促されていきます。赤ちゃんは上下の唇で乳首をはさみ、舌で乳首を上アゴにおしつけ、しごくように動かしてお乳をしぼりだし飲みこみます。赤ちゃんはこのたいへんな運動を口のまわりを精いっぱい使って行ない、舌、唇、頬、アゴを動かす筋肉を発達させます。とくに乳首をしごく舌の前後運動は、赤ちゃんのアゴを前方に押し出し、したアゴの発達を促します。この運動は将来的に歯の噛み合わせがうまくいかない不正こう合を防ぐといわれています。
 ここで、ミルクで育つ赤ちゃんについて考えてみましょう。
 母乳がでにくい場合、母親の健康状態が良くない場合、母親が勤めている場合には、赤ちゃんの発育のために調製粉乳を併用します。哺乳ビンによる授乳は、機械的にならないように赤ちゃんを抱いて飲ませるようにするといいと思います。お母さんが抱いて飲ませてあげることは、赤ちゃんの心の発達にとても大切なことです。
 哺乳ビンのゴム乳首にはかるく吸うだけでミルクを飲めるものがありますが、これではアゴの発達は望めませんし、吸う運動からくる適度な疲労と精神的な満足が得られずに、赤ちゃんのストレスがたまってしまいます。吸い穴の大きい乳首や流量の多い乳首はやめたほうがいいと思います。また、月齢にしたがって大きめのものものにかえていくことが必要です。
 吸い穴の大きい乳首で赤ちゃんを上向きにしてミルクを流しこむような飲み方を習慣づけてはいけません。この方法が最も吸う努力をしない飲み方で、当然運動量も少なくなってしまいます。
 最近では、このような欠点を補うために、全体の形が大きめでミルクを出す穴が横についているゴム乳首が市販されているようです。

 ところで哺乳ビンは、ミルクだけでなくいろいろな飲料を与えるのに便利ですが、便利だからといって清涼飲料や乳酸飲料を与えるのは絶対にやめましょう。哺乳ビンの場合、飲料が口の中に停滞するので、酸性度の高い飲料だと重症のムシ歯をつくる危険性が大きいのです。歯がはえる前の時期でも、赤ちゃんの甘味嗜好をエスカレートさせることになってしまいます。これがムシ歯や肥満、さらに将来的にはいろいろな成人病を生み出す原因の一つになります。果汁やスポーツ飲料も同様です。歯がとけ始めるpH(酸・アルカリの単位で一に近くなるほど酸性が強くなる)は5.5ですが、清涼飲料、乳酸飲料、スポーツドリンク、果汁などは、pHが三前後ですから歯によいわけがありません。とくに、赤ちゃんが眠る前には絶対にやめましょう。眠っている間は弱アルカリ性のダ液が分泌されないので、非常にムシ歯になりやすいのです。

 お母さん方、参考にしてみてください。



野中先生

 

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