9.2.1999

No.0007

あるスナックのマスター

今から十数年前、ある歯科医院に私が勤務していた頃のお話です。
友人でもあった近所のスナックのマスターがある日「つめたものが取れた」と受診に来ました。私は、用心のためにお口全体のレントゲン写真を撮ってみました。写真にはその歯とは別に折れた歯があり、根っこだけになってしまってました。その根っこの先には、大きな大きな病巣(たくさんの細菌の塊の嚢)がありました。
私はそのマスターへ歯科大学病院で診てもらうように勧めましたが、日頃から頑固で通しているマスターは「痛くはないから」と言って行こうとはしませんでした。

その年のある日、泥酔したマスターは足の骨を折るけがをしました。半年間の入院の後、足を切断することは免れ無事退院することができましたが、その後なぜかその足は腫れを繰り返し体自体の状態も思わしくはありませんでした。
私は、治療を放置している歯の病巣からの影響【病巣感染】ではないかと思い、「その腫れは、歯との関係の疑いがありそうだ」ということを、足のお医者さんへ相談してみてはとマスターへ勧めました。しかし、マスターは又も私の薦めに応じてはくれませんでした。

昨年、そのマスターは亡くなりました。死亡の原因は別のことでしたが、私はその歯の治療をもっともっと強く勧めて、治療を受けさせるべきだったと悔やんでます。

因みに【病巣感染】とは、その病巣の場所から遠く離れた場所へ飛び火し病気の症状を起こすことをいいます。


下村先生

BACK