10.12.2000

No.0065

貴方は『いびき』をかきますか?

 旅行などで、一緒に寝ている仲間や恋人が『いびき』をかいていると、うるさくて一睡もできずに寝不足で困ってしまった、という経験をお持ちの方はいらっしゃいませんか?。

 実は、私も『いびき』をかく体質なんです。特に、お酒を飲んだ翌朝には妻や子供から「お父さんの『いびき』がうるさくて、全然寝れなかったじゃない!。」と、苦情を言われてしまいます。「本人自信に悪意はないんだけれど、知らぬ間に家族へ迷惑をかけているんだな〜。」「お酒は少し控えようかな?。」などと、少し反省してみるのですが、仕事や友人との付き合いには、どうしてもお酒を飲む機会があり、飲まないと言う訳にも行きません。結局、「『いびき』は生理現象で、仕方のない事だから。」と、自己に納得をさせ、お酒を飲んだ夜は淋しく1人で寝るようにしております。

 とかく他人には嫌がられる『いびき』ですが、その『いびき』とは果たして何なんでしょう?。『いびき』をかく事は、体にとってどうなんでしょう?。良くないことなのでしょうか?。そこで、少し専門的なお話をしてみようと思います。
 皆さんは【睡眠時無呼吸症候群】という病気を御存じですか?。
 そもそも『いびき』は、“上気道の不完全閉塞”という機能の不具合によって起こる《雑音》です。『いびき』の音が規則的に生じている内はまだ問題はありませんが、この“上気道の不完全閉塞”がより悪化してくると、睡眠中の呼吸が不規則に途絶えてしまう、つまり呼吸をしていない状態が生じてきます。この無呼吸状態が、「10秒以上継続する窒息が、7時間のうちに30回、又は1時間のうちに5回以上生じる」と【睡眠時無呼吸症候群】と診断されるそうです。

 「たかが『いびき』じゃないか!。窒息していると言っても、呼吸しない時間がほんの少し長いだけのことじゃないの?。」と、思われている方も居られるでしょう。しかし、「『いびき』などは、病気の内に入らない。」と誤認されている方々の為にあるデータをお伝えしておきます。
 この疾患(【睡眠時無呼吸症候群】)の治療を受けずに放置していた場合、死亡率が、5年で8%、8年で22%と加速的に増加しているのです。
 又、二次的な要因として心不全,心筋梗塞,脳血管障害,そして、『いびき』による浅い睡眠不足での交通事故,など、今や社会問題として注目されてきているのです。

 さて、『いびき』の原因とは、一体何なのでしょう?。大まかに考えられるのは以下の5点です。
(1)多めの飲酒
(2)先天的肉体的特性(猪首の人)
(3)いわゆる肥満の人
(4)お口の中の大きさに比べて、舌の大きい人
(5)鼻腔が閉塞ぎみの人
 端的に言うと、これらの原因を無くせば、自ずと『いびき』もかかなくなるわけですが、「言うは易し、行うは難し」です。

 そこで、対症療法ではありますが、ある器具をお口の中に入れるだけで、大部分の方の『いびき』を簡単に防止する方法をご紹介致します。(実は、私もやっております。)
 その装置はボクシングやラグビーの選手たちが、口にはめるマウスピースのようなもので一般に透明(色付きのもあります)なプラスチックで作られているものです。制作は歯科医院でやってもらわなければ成りません。オーダーメイドが一番だからです。
 因みに、作り方としては、先ず歯科医が希望者の顎の上下の歯型を採ります。それを元に石膏模型を作ります。その石膏模型に合わせて、プラスチックを特殊なプレス機で圧接 します。できたプラスティックの余分を削り仕上げます。最後に、実際に装着をしてもらいながら最終調整を何回か行います。安定感が出てきたら、一連の処置は終了です。後は、定期的な検診となります。
 この装置を装着することで、仰向けに寝た時に下顎が後方に下がり、よって舌の根元が気道を圧迫閉塞するという状態を防ぐ事ができるわけです。
 但し、この装置だけで『いびき』を完全に予防することは、無理な場合もありますのでご注意下さい。

 今や『いびき』の治療は医者だけの領域だけに限らず歯医者の必要性が問われています。私も『いびき』の治療にどしどし参加して、『いびき』でお悩みの患者さん方へ御協力できれば幸いと思う次第です。


山本先生

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