9.21.2000

No.0062

Ca(カルシュウム)

 歯や骨の成分となっている【Ca(カルシュウム)〔以降はCaのみ記載〕】は、人間にとって大変必要なものであることは、言うまでもなく皆さんもご存じのことでしょう。ところで、世界に比べて日本では、子供達の虫歯や骨折の発症数が増加の傾向を依然示しています。この原因の一つには、人が生存していく基本の要因である土壌にあるのではないかと考えることも、意味のあることと私は考えました。

 私達の住む日本は世界有数の火山国です。火山灰が降り積もってできたその表層の土壌は、酸性質のものです。よって、その土壌には【Ca】はほとんど含まれていないのです。その土壌で収穫される穀物や野菜などは、自ずから含有Caが少量でしょうし、生きるために最も大切な飲み水(河川,井戸水,地下水など)に含まれる【Ca】も少量だと思われます。古くから日本は世界に比べて魚を多く食す文化ではあり、そのことが『Ca不足』を補ってくれていたと考えられます。しかし、昨今の食生活では“魚離れの傾向”が著明であり、このバランスの崩れたことが、『Ca不足』に拍車をかけているのでしょう。言うなれば、日本人は宿命的に『Ca不足』になりやすのです。

 ならば、魚を好まないヨーロッパでは『Ca不足』はもっと著明なのかと言えば、実はそうではないのです。例えば、イギリス南部の港町ドーバーの崖が白い地肌を見せているのは、豊富な【Ca】が土壌に含有されている証拠なのです。ヨーロッパ一帯の土壌は水成岩からなり、その土壌には【Ca】が豊富に含まれているのです。魚を食すまでもなく【Ca】は十分に摂ることができる文化なのです。

 『Ca不足』は、人にどんな影響をもたらすのでしょう?。

 ある実験によると、同じ母親から生まれた12匹の白ネズミをA,B2つのグループに分け、Aグループには普通の餌をBグループには青野菜とCa抜きの餌を与えました。数日後それぞれのネズミの体重を量る為に飼育箱に手を入れると、Aグループのネズミはおとなしく捕まるのですが、Bグループのネズミは噛みついてきたとのことです。このことは『Ca不足』の原因が、ネズミの気を荒くさせているのだと考えられるのです。 【Ca】の役割は、単に歯や骨を作るだけではなく神経やホルモンの働きに深く関わり、心身の健全性を保つ(安定させる)大切なものなのです。【Ca】は体内では歯や骨として安定しているだけではなく、血液・体液において《Ca+イオン》として存在し臓器や器官の働きの調節に関与しています。その《生》そのものである心臓の規則正しい拍動を営ませる為には、【Ca】は必要不可欠なものです。同様に、筋肉の働きによって私達は、歩いたり・走ったり、何かものを掴んだり、ご飯を食べたり・話をしたりする等々、体を動かすことだできます。しかし、体内の【Ca】のバランスがとれていないと、筋肉を働かさせることができないのです。筋肉の収縮には【Ca】が必要なのです。時に、血中の『Ca不足』が生じると、その不足を補う為に骨内の【Ca】が即座に供給されます。逆に、血中の【Ca】が多くなると、単に排泄されるだけではなく骨に取り込むことでバランスを保ちます。言うなれば、骨は【Ca】の貯蔵庫であり供給源なのです。そして又、血液のPH(血中の酸,アルカリ性度)を7.4前後に保たせているのも【Ca】です。更に、ケガをして出血が起こっても、血液自信が固まって出血を止めようとしてくれますが、この血液凝固の為にも【Ca】は働いています。体外からの供給が追いつかず消費され過ぎると骨が弱ります。いわゆる、骨粗鬆症です。(【Ca】は女性ホルモンとの関係が深いので、女性は発症度が高いことに注意されて下さい。)

 とにかく、こんなに大事な働きをしているCaが不足しないようにするには、成人平均1日600mg位の【Ca】を摂取することが、とても大切なのです。ファーストフードやインスタント食だけでは、【Ca】の摂取は不十分です。

 因みに、牛乳(200mg),豆腐類(180mg),いわし丸干し(280mg),桜えび(200mg),小松菜(230mg)等々を偏りのない食事として摂ることが賢明です。  最近頓に、【キレる】という感情行動が目立ってきています。特に、テーンエイジャー(十代後半)の無分別・無軌道な行動は、放置できない社会問題です。一見大げさに思えるかもしれませんが、この社会問題の原因は『Ca不足』の蔓延ではないのか、とさえ筆者は考えさせられます。若者達の『Ca不足』がイライラを招き心を闘争適にさせてしまうのではないのでしょうか?。

 最後に提案します。イライラしたら、先ずは牛乳を一杯飲みましょう。


荻野先生

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