9.7.2000

No.0060

審美へのプロローグ “神の与えられし器官”

 神様は、人間の持つ全ての【器官】の中で、唯一『歯』にだけに二度の“チャンス”を与えてくれました。それは『乳歯』と『永久歯』です。そして、誕生から約12年間という月日として、それらの調和のある変化を与えてくれました。何故なら、この世に人間として生きていく為に、『歯』は最も大切な【器官】であるからなのでしょう。

 『乳歯』は決して一時的に‘間に合わせ’のような物としてあるのではありません。人間が、栄養供給として乳にのみに頼る《ほ乳》から、いわゆる食べ物を取り入れる為の《咀嚼・嚥下》の機能を得るために大きな役割を担っているのです。更に、次に訪れる永久歯の為の大切な道しるべとなるのです。

 いいえ、食物摂取の為にだけあるのではありません、生まれてから最初に発声する「オギャー,オギャー」の泣き声も、成長と共に泣き声以外の発声ができてきます。いわゆる言葉の前の段階である{赤ちゃん言葉}を使うことができるようになるためには、乳歯はとても大切なのです。乳歯が正常に生え揃う(萌出完成)と、乳歯の前歯は‘空き歯’になります。この空いている状態は、ハッキリとした発音で言葉を発しづらいものです。だからこそ、幼児は一所懸命に話そうとします。このことは、次への成長にはとても大切なことです。更に、乳歯から永久歯へ変わる際には、一時的ですがより多くの隙間が生じることになります。乳歯が抜けても急に永久歯が取って代わるわけではなく、永久歯自体の萌出にも必要な時間がかかるからです。その間は隙間が生じているわけです。この隙間は、子供達に更なる試練を与えてくれます。発声をしっかりおこなう訓練が続くのです。そのかげで、幸いに先天的障害の無い人間は、《話をする機能》を平等に身につけることができるのです。

 人間の人間たる由縁の一つに、【人間としての顔かたち】があります。人間以外のほ乳動物は大概“口元(顎)”が前方へ突出しています。人間に一番近い動物といわれているチンパンジーでさえ、出ています。しかし、人間は頭蓋骨に比べ“口元”は飛び出ていません。人間の顎は、“2足歩行”を行い、更に“大きな脳”を支える為に首に負担をかけないように、小さくなりました。その小さい顎に調和のとれた歯が、生えてくれることで【人間としての顔かたち】は種として存在することができるのです。

 成人するまでの成長の過程において、調和のとれた歯並びは、単に美的価値観を追求しているのではなく、『人間として大切なものを育てる』為には、とても大切なのだということを皆さんに知ってもらいたいのです。「結果として美しいもの」となることが、望ましいと考えるのです。

 現実の社会生活を考えてましょう。

 私が「調和のとれていない歯並び」を持っているとしましょう。聞き取れにくい発音に自信が損なわれやすい不安を持っているかもしれません。不自由なく食事をおいしくとれなくて、イライラしたり、胃腸の調子を気にしているでしょう。肩こりがひどくて不眠症気味かもしれません。口元が気になって、人との接触を控えてしまっているかもしれません。憂鬱な気分に悩んでるでしょう。

 しかし、私が「調和のとれた歯並び」を持っているとしましょう。健康的美しさは、自信のある日々の生活を送れていることでしょう。朗らかな表情を自然に振る舞えていることでしょう。スルメで一杯やるのがストレスの解消になっていることでしょう。

 歯は【口】を、口は【顔】を、そして、顔は【その人】を作ります。


梶山先生

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