8.31.2000

No.0059

大豆蛋白の歯への効用

 日本人らしい食生活の基盤、つまり、『米(コメ)の飯(メシ)を食べる』事で、“ムシ歯の予防”になることを、皆さんはご存知でしょうか。とはいっても、コメ自体が直接“ムシ歯の予防”になるわけではありません。コメを主食にするときの副食が、ムシ歯予防に大きな効果をもたらすのです。

 ムシ歯の真犯人【ミュータンス菌】でも決して不死身ではありません。ムシ歯の激痛を思い出すと、どんなにか強いヤツだと想像しがちですが、【ミュータンス菌】にもやはり弱点はあるのです。  その一つが、【グリシン】というアミノ酸です。【ミュータンス菌】は、このアミノ酸に出会うとムシ歯を造り出す工事への意欲がすっかり衰え、増殖が阻止されます。【ミュータンス菌】にとって、【グリシン】は天敵なのです。つまり、【グリシン】を大量に摂れば、ただそれだけでムシ歯予防には大いに役立つということです。

 【グリシン】は大豆蛋白のなかにたくさん含まれています。では、大豆蛋白とは何か、列挙すれば、醤油、味噌、納豆、豆腐、湯葉、がんもどき、油揚げ、おからなど、大豆が原料のものであり、これらはみな、コメのメシの代表的な副食です。

 この【グリシン】は、口の中で、直接アミノ酸として【ミュータンス菌】に働きかけるわけではありませんが、日本人の歯並びは西洋人に比べ、奥にいくほど広くなっています。これは、和食を噛みやすくするために変化してきた日本人のための歯列なのです。

 赤みの刺身、天ぷらに使う植物油もムシ歯予防に効果があるらしいことがわかっています。これらのなかに含まれる【不飽和脂肪酸】が【ミュータンス菌】の活動を阻止するという説です。

 因みに、大豆油、ごま油、米油、に含まれている【不飽和脂肪酸】は血管中のコレステロールを追い出して高血圧の予防までしてくれるので一石二鳥になります。

 又、日本食にはカビや細菌がつきものです。納豆、椎茸、天然味噌、醤油、地酒、なめこ、漬物、なれ寿司、くさやの原液などは、いわばカビであり、細菌です。カビや細菌は【デキストラン】を溶かす【デキストラナーゼ】という酵素をつくります。つまり、ミュータンス菌のムシ歯工事の仮小屋を壊滅させる働きをします。これもムシ歯予防には効果的です。

 これらの副食は、ちょっと以前の日本人は習慣として、毎日食べていたものです。『“ムシ歯の予防”の為』という目的があったわけではありませんが、日本の食習慣は、むかしからムシ歯予防になっていたのです。

 このような食習慣が崩れたのは、外国からの輸入食品によってであります。主食が、パンになったり、パスタになったりという具合に変わってきました。

 それにしても、「パンと納豆」「パスタとおから」などの食の組み合わせも慣れてみればけっこうイケルかもしれませんが。

 コメのメシを食べていれば、意識しなくても、ムシ歯予防の副食を摂ることにつながってはいきますが、コメ自体がムシ歯予防になるわけではありません。

 日本人が、日本人らしい食生活をすれば、つまり和食のよさを再認識すればムシ歯や歯周病が減り、もっともっと自分の歯で食べていける人が増えるのではないでしょうか。 もう一度ここで和食のよさを再認識しよう!


野中先生

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