8.24.2000

No.0058

虫歯の新しい検出法について

 最近では、虫歯の病気について、歯を削って詰め物をする(歯冠修復治療)治療を行うことばかりでなく、虫歯になってしまう前に予防をしておく治療(う触予防処置)や、日々の個人のお口の衛生管理を充実させることで虫歯の発症や進行を抑制することを、広く押し進めていくことが提唱されています。その方向性に則って、私達歯科医師も日頃の診察や診療を行っております。

 虫歯の発症は、一般には歯(歯冠)の表層をつかさどるエナメル質(硬組織)の表面の脱灰から始まります。この様な虫歯の始まりを極めて初期に発見することが可能であれば、皆さんご存じのあの嫌な虫歯の発症を抑えてしまうことが可能なのです。普段の歯磨きやフッ素塗布での予防は現実には十分になされていません。その理由は、この様な初期の虫歯の状態を実感できていないと言う理由だと、私は考えます。本当に虫歯も早期発見,早期対処(予防処置も含めて)ができれば、気づかない内に進行してしまった虫歯をガリガリ削られることも無くなるのです。

 現代歯科医療において、診察の際の虫歯の検査(診査)には、【ミラー探針】という器具を用いています。この器具は、実際には極初期の虫歯の発見には不十分な点があります。電顕レベルの虫歯の発見は不可能なのです。実際、この器具を用いた検査方法での正確診断の確率は、57%程と言われております。加えて、X線写真を用いて診査を行った場合でも67%程と報告されております。今までの歯科医療レベルでは、虫歯の発症のなれの果ては、『削り詰める』といった修復処置治療なのです。人生80年、十代,二十代に一度虫歯になってしまった歯は、修復材料の寿命のサイクルの方が短いので、複数回の修復治療の悪循環の末、自身の歯そのものが保ちきれなくなって、抜歯(臨終)となってしまうのです。

 そこで登場するのが、近年開発された【レーザー光線】を利用した虫歯の診査(診断)装置です。この装置の働きは、655nm(ナノメーター)のレーザー光線を歯の表面に照射すると、その反射光はある種の蛍光を発します。その蛍光の強度を数値化することで、極初期の虫歯でも検知できるという仕組みなのです。硬組織(エナメル質)の変化の度合が、明確に数値化(00〜99)される為に、治検上90%以上の虫歯の診断ができたとの報告がなされています。測定値が30以上となった場合、その歯は修復治療の必要の目安となります。逆に測定値が30未満であれば、【積極的な再石灰化処置】(フッ素塗布やプラークコントロールやプロフェッショナル・クリーニング等)によって歯はよみがえるのです。削らずに治ってしまうのです。太古より、「虫歯の自然治癒はあり得ない」と言われてきました。しかし、極めて早期に発見し且つ速やかな【積極的再石灰化処置】を行えれば、この言い伝えは、消滅してしまうのです。

 私達現代人は、365日食べ物(料理)を口にしないことはありません。無菌状態の環境での暮らしも不可能ですし、無意味です。虫歯の発症の危険は、常に私達につきまとっているのです。しかし、近い日、今までの様な歯科医の目ででしか確認できなかった虫歯の有無も、定期的な歯科検診(レーザー検診とでも言いましょうか)を受けることで、自分の一本一本の歯の健康状態をデジタルに且つ客観的に知ることができるようになるのです。そうすれば、一生、あの嫌なタービンの音もエンジンのガリガリも経験せずに済むのです。

 私達歯科医師の世界にも、デジタル革命は起きつつあるのです。未来も捨てたものではありませんね。


清浦先生

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