4.13.2000

No.0039

歯科用『レントゲン撮影』の被爆について

 日々の歯科診療の中で、『レントゲン撮影』は数多くの患者さんに対して行っている検査方法の一つです。患者さんの中には、『レントゲン撮影』に対し“抵抗感”をお持ちの方や、又妊娠されている(妊娠の疑いのある)女性の方がレントゲンの被爆により、赤ちゃんの癌の発症,奇形,白血病,果ては不妊症などの心配をされる方がいらっしゃいます。そこで今回は『レントゲン撮影』について、できるだけ解りやすい説明のお話をしたいと思います。

 『レントゲン撮影』に使われる“X線”とは、いわゆる放射線の一つです。

 そもそも放斜線は、電磁放斜線(電磁波)と粒子放斜線(粒子線)に分類され、医療関係には前者の電磁波が利用されています。電磁波は、X線とγ線があり、自然界からも色々な放斜線が我々の人体に影響を受けている事を忘れないでおいて下さい。外に出れば、自然放斜線である地殻からの放斜線や今や全米を震撼させている高圧線の問題、家庭内では、テレビ、電子レンジ、パソコン等があります。 ここで、医療によるX線の被爆量は、国民の全被爆量の約20%位で残りの80%は、自然放斜線(年間2ミリシーべルト)が主だといわれております。医科で主に撮影される胸部X線撮影で0.1ミリシーベルト(=放斜線防護や障害の目的で用いられる線量という単位)で、歯科用のデンタル撮影では、一枚の撮影で顔面皮膚の被爆は2ミリシーベルトであり、年間の自然放斜線からの被爆と同様です。

 オルソパントモの撮影は、一般歯科から矯正治療の診査で多用され、全顎(上顎洞や関節頭を含む)を一枚の写真で把握する事ができ、奥歯に炎症があって口が大きく開けられない患者さんも苦痛がなく撮影できるばかりか、胸部X線と同様に増感紙(これをフイルムの間にサンドイッチする事で少ない線量で撮影可能)を用いる事で、被爆量も少なくてすみます。

 次に妊娠されておられる方が、気が付かずに被爆した場合と妊娠初期の被爆で奇形児の出産の場合、被爆により不妊症になる場合の三点についても国際放斜線防護委員会の勧告では、歯科用X線検査は問題ないといっております。数値的に説明しますと、生殖腺の被爆は1万分の1で、0.0002ミリシーベルトで鉛エプロンを装着すれば、0でまったく問題ないという事です。

 我々、歯科医はレントゲン写真を観ながら虫歯の進行、歯髄や歯槽骨の状態を把握して、どのような治療をするのかを検討し、患者さんにわかりやすく説明します。矯正治療に関しても、永久歯の萌出状態や歯の移動での異常吸収の有無を診査する為に欠かせない診査器械の一つです。

 患者さんが、放射線被爆に伴いプラスの利益を生むものでなければ使用してはならないし、そのことは医療全般にいえることだと思いますが、治療の過程に於いて有益性を上回る事でよい結果を得る事ができるよう医療機器を上手に活用していきたいものです。


山本先生

BACK