12.23.1999

No.0023

一兎を追うもの二兎を得る?

 数年前の年末のことでした。飲み友達の池さんがめがねをかけてきました。訳を聞くと、来年からは悪いところをひとつづつ直していこうと決めたのだそうです。で、今年はとりあえず目を直したと言うことです。「来年からは歯を治すつもりだからよろしく!」と、池さんはやる気充分です。前々から池さんの歯はぼろぼろで、根っこだけの歯などたくさんありました。治すように強く勧めてはいたのですが、何やかやと理由をつけてはやろうとはしませんでした。そのため、私は、もうそのことに関しては何も言わなくなっていましたし、本人の言葉を今一つ信じられませんでした。

 ところが翌年になってから本当に毎日のように診療所に通うようになったのです。かなり状態が悪かったため、時には3〜4本歯を一日で抜いたりとか、結構集中して治療しましたが、それでも夏過ぎまでかかってようやく治療が終了しました。もともと杜撰な性格の池さんがよくもここまでやれたと本当に驚き、来年はいったい何を目標にするのだろうと楽しみにしていました。

 その年の年末です。「実は来年の目標なんだけど、もう達成しちゃったんだよ。」と、うれしそうに池さんが言いました。話によると、今年は歯を直したので来年は鼻を直そうとしていたらしいのです。そういえば冬になるといつも池さんは青っ洟をたらしていました。鼻の穴からいつも見え隠れしていた青っ洟がそう言えば見えません。どうやら鼻の状態も良くなっていたようです。

 歯を直せば鼻の悪いのが必ず直ると言うわけではありませんが、歯と鼻は近いところにあり、歯の根の病巣が原因で鼻に症状が出ることもあります。池さんの場合はそうだったのかもしれません。いずれにせよ、悪いところを直すとどこか別のところにも良いことが起こることが多いような気がします。

 新年を迎えるにあたって皆さんもひとつ悪いところを直そうと計画を立ててはいかがでしょうか。


下村先生

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