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5.22.2003

No.0193


【インプラント】歯科治療
始まりと歴史とその現状について

 近頃、歯科治療の一つに【インプラント】又は【インプラント義歯】という言葉を、メディア等でよく耳にするようになりました。皆さんはご存知ですか?。

 一般的に【インプラント】治療とは、体にとって‘無刺激・無毒’‘体に適応しやすい’‘性質の高い’人工物をその臓器の替わりに使う(一部若しくは全てを体に埋め込む)ことをいいます。例えば、医科の分野では、人工腎臓や人工関節などがそれにあたります。
 歯科分野での【インプラント】とは、“人工歯根”のことをいいます。この人工歯根は金属やセラミックで作られています。(根っこも含め)歯がなくなってしまった部分に“人工歯根”を植え、それを土台にして固定式若しくは可撤式の義歯をいれる治療です。
 この人工歯根によって固定式の義歯(ブリッジ)で治療できる場合は、可撤式(いわゆる入れ歯)に比べて義歯の装着の違和感が可成り少なくなります。この点において最近需要が高まってきている原因と思われます。

 歯は、若さと美と健康そして力強さの象徴ですが、歯が丈夫な時は人はなかなかそのことに気づきません。しかし、実際にその歯がなくなると、ほとんどの人は「何とか健康な歯を取り戻したい。」と思い始めます。こうした願いは、今も昔も変わりはないようで、古代の遺跡からもその事がわかります。
 古くは紀元前3世紀頃のエジプトで、歯の抜けてしまった穴に、他人の歯や象牙、宝石などを埋める試みが行われていたという記録が残っています。
 メソポタミアやインカの遺跡の中からは顎にヒスイのような石を埋め込んだ人骨が発見されています。又、古代ギリシャやフェニキアでは権力者が、奴隷や部下の歯を抜いて自分の歯に埋め込んだり、抜け落ちた歯を黄金線で固定したといわれています。

  しかし、現在のような学問的な意味で行われてきた歯科治療における【インプラント】は、ほんの100年程前からアメリカやヨーロッパの歯科医師達によって手がけられ始めた物です。彼らは、ネジ式や板状の【インプラント】を歯の抜けた穴に植えていました。

 1960年代の初め、スウエーデンのイエテボリ大学医学部解剖学の‘ブロ−ネマルク教授’は、骨の治りについての実験の為にウサギの足のスネの骨に、チタン合金製の筒を埋め込みました。一定期間の実験観察が終わったので、そのチタン合金製の筒を再使用の為に骨から取り出そうとすると、筒は骨と強固に結合してしまっていた為、周りの骨を壊すことによってしか取り出すことができませんでした。
 この偶然の発見が現在の【インプラント】歯科治療を生み出したのです。
 この‘ブロ−ネマルク教授’の【インプラント】は主に北欧や北米で広まり、多くの科学的なデーターを集積してきた結果、10年経過後の成功率(10年たって口の中で何ともなく機能している患者さんの割合)は95%を越えているそうです。1965年に下顎「総入れ歯」の40代男性に埋め込まれたチタン合金製の歯根型の【インプラント】は、今も問題なく機能しているそうです。

 一方、日本でも1960年代頃より、その夢を実現しようとするチャレンジが行われてきました。いろいろな新しい材料や形態が登場し、現在では多数の高品質な【インプラント】が提供されています。
 ‘ブローネマルク教授’が行った実際の患者での長い期間の成功の報告症例と豊富な動物実験と歯周病学の進歩により、現在では欠くことのできない歯科診療の一分野となりました。現在では日本全国の歯科大学において、続々とインプラント診療科ができています。

 昨今【インプラント】歯科治療は、よい情報、悪い情報とまちまちです。何故なら【インプラント】歯科治療をめぐる裁判事例が、事実昨今多かったからです。しかし、インフォームドコンセントの重要性が認識されるようになった現在、【インプラント】歯科治療 は決して遠い存在ではなくなりました。
 もし、【インプラント】歯科治療に関心をお持ちになられたのなら、かかりつけの歯科医の先生にご相談されてみては如何でしょう?。

 最後に、この【インプラント】歯科治療の長所,短所,適応症(貴方に適しているか否か),治療期間そして治療費などについて、先ずは『詳しく丁寧に説明を聞かれることが大切です。』と言うことを申し上げて今回のコラムを終わります。



澤田先生

 

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