writing : wahaha's members / 毎週木曜日更新

画面サイズを最大化にして、お読み下さい。

1.30.2003

No.0185


口腔アレルギー症候群
OAS(Oral Allegy Syndrome)

 『アレルギー』という病気は、今や知らない人は誰もいない程もっともポピュラーな病気の一つです。直に春がやって来ますが、“花粉症”をお持ちの方々にとっては、とても嫌な季節を迎えることになりますね。
 近年、“花粉症”に限らず“シックハウス症候群”“成人アトピー性皮膚炎”など公害ぜん息(ぜん息も代表的なアレルギー疾患です)に苦しんだ昭和の時代よりも『アレルギー』疾患は爆発的に増えているそうです。その理由や原因は諸説紛々ですが、今だ確定的な判明はされておらず、更なる研究課題のようです。

 さて、『アレルギー』疾患は歯科の領域にもあることを皆さんはご存知でしょうか?。最近よく言われているのが、『金属アレルギー』です。虫歯治療の為の詰めたり被せたりする金属が『アレルギー』を起こしてしまうのです。しかし、幸いに今では金属を全く使わない歯科治療が可能となっています。
 ネックレスや指輪又はピアスなどでかぶれたことのある方が歯科治療をお受けになるときは、必ずその歯科医師に申し出られておいて下さい。さすれば心配はないでしょう。この様に歯科での『アレルギー』の代表疾患の『金属アレルギー』は、患者さんにとっても私達歯科医師にとっても今や難しい問題ではなくなりました。

 ところが、つい最近まで全く見当も付かなかった問題が残っていました。
 何年か前の事です。初診でお見えになったある患者さんが、「歯ぐきが、かゆい。」と症状を訴えられたのでした。視診やレントゲン写真での検査などでは、何ら異常を見ることはありませんでしたので、しばらく様子を見ていくことしかできませんでした。すると、2〜3週間経った頃「かゆみは、なくなった。」と言ってこられました。私にとっては、なんだか‘狐に摘まれた’ような出来事でした。
 その事を忘れかけた頃、又別の患者さんが「歯ぐきが、かゆい。」といって初診でお見えになりました。この患者さんは心療内科に通われているとのことだったので、心身症をも考慮してやはり様子を見ていくことにしました。数週間経ったある日、「もう、かゆみはなくなった。」といって来られなくなりました。心身症が改善されたのだろうと思い、この件についても私は忘却の彼方へと行ってしまいました。

 私自身、過去(27才頃のことです)に“キウイフルーツ”で、食中毒のような下痢や嘔吐でかなりひどい目にあったことがあります。その時はまさか『アレルギー』だとは思ってもいなく、その後は唯単に“キウイフルーツ”は嫌いな食べ物の一つになっただけでした。
 40才を過ぎたある日、ケーキに付いていた小さなキウイフルーツを何気なく一欠片食べてしまいました。すると程なく喉がピリピリしてきたかと思うと心臓がドキドキし出しました。「これは尋常ではない。」と思い横になって様子をうかがっていると、2〜3時間たった頃ようやく落ち着いてきました。喉のいがらっぽさは、少し残っていましたが最初ほどではありませんでした。
 「もしやして『アレルギー』では?。」と思い、『アレルギー』の検査を受けてみました。するとどうでしょう、しっかり“キウイフルーツ”に『アレルギー』陽性反応(測定値H 2.18クラス2)が出ました。因みに、他に6つ程アレルゲン(ハウスダストH35.2 クラス4, ヤケヒョウヒダニH41.5クラス4カンジダH5.27クラス3, カビH2.15クラス2, ジョウヒH2.10クラス2, ダイズH0.44クラス1)がありました。
 私は子供の頃に小児喘息を患っていましたので、『アレルギー』体質ではあったのですが、食べ物にも『アレルギー』があったことには少々ショックでした。こんな私ですがそろそろ多くの方が悩まれる花粉症にはかかったことはなく、実際の検査でも花粉の『アレルギー』は有りませんでした。

 『食物アレルギー』については、マスコミなどで伝えられていることで既にご存知の方も居られると思いますが、それは“ソバ”や“卵”“青魚”など穀物やタンパク質などだけではなく、果物や野菜などありとあらゆる物に『アレルギー』はあり得ると云うことを再認識しておいた方がよいと思います。因みに、花粉症との関連もあるとのことですので、花粉症の方は注意の必要なことだそうです。
 仮に子供に好き嫌いがあるとしても、単なる我が侭を言っているのではなく、もしかしたら食べると具合が悪くなった経験から食べるのを嫌がっているかもしれません。子供に嫌いな食べ物や食べると何故か調子を崩す食べ物があれば、一度アレルギー検査を受けさせるべきと私は思います。

 『アレルギー』に関わりの深いお医者さんと言えば、“皮膚科”か“耳鼻咽喉科”(因みに最近はアレルギー科というのがあります)ですね。ですから、患者さん自身が『アレルギー』だと気ずいて無くても、病気の原因が『アレルギー』なのだということを見つけてくれる確立は高いことでしょう。
 しかし、私の知る限り、歯科医師の多くは口腔内の『アレルギー』反応についての深い見識は持っていません。もし、口の中の何処かがかゆみを感じたらアレルギーかなと疑ってみることが大切です。それを踏まえて歯科医院にかかると病気の解明や治療にとても役立つことと私は思うようになりました。是非この事を皆様のご記憶に留めておいて下さることを願っております。

 参考資料:http://www02.so-net.ne.jp/~smaguchi/OAS.html
 *OAS Oral allegy syndromeとは
  口腔、咽頭粘膜の『アレルギー』であるoral allergy syndrome (OAS) はIgE を介した
  即時型反応であり、患者は特定の果物、野菜の摂取の数分後に口腔、咽頭、口唇の
  かゆみ、腫脹を引き起こす。
  まれではあるが、喉頭浮腫あるいは全身的なアナフィラキシーショックを
  引き起こすこともあり注意が必要である。



古賀先生

 

BACK