writing : wahaha's members / 毎週木曜日更新

画面サイズを最大化にして、お読み下さい。

11.7.2002

No.0173

【プラシボ薬(効果)】ってご存知ですか?

 「貴方が風邪をひいたら、どんな治療をしますか??」と質問すると、概ねだいたいの方は「風邪薬を呑む。」と答えます。まったく当たり前のことですが、『病気は薬で治す。』と言うのは現代の常識です。
 しかし、人間が地球上に現れた頃約1万年前からつい数百年前までは【祈祷】と云ういわゆる『神頼み』をして治療していました。『薬』と言う認識が表れたのは古代中国が起源とも云われていますがそれでも3,4千年前のことです。このころの薬は経験的に処方されていましたし、処方された薬を得ることができたのは一部の高貴な人々でした。
 『医食同源』と言われるように体によいとされる食材を豊富に使って食事をとれるのは一部の高貴な人々であって、大多数の庶民平民は粗末な食事であったわけですから『薬』とは縁遠いものでした。庶民平民達は、仏教を信ずるものは『薬師如来』を参ったり『土地の神』に祈願したりして病気を治そうとしていたそうです。
 もちろん、日本でも病気療養には『薬』を飲むというより、神仏に祈祷したり温泉の近場の人々は『湯治』に頼っていた方が大多数でした。日本同様ヨーロッパの一部でも『飲泉』といって温泉を飲んで病気を治していたそうです。このような昔の病気の治療療養の方法は、現代医学の『薬』ほど即効性はありませんでした。

 近代、細菌学や薬理学など様々な『薬』に関わる学問が発展しました。チフスや赤痢そして結核などかつて人々を震え上がらせた‘死の伝染病’も現代の『薬』のおかげで決して恐ろしい病気ではなくなりました。天然痘に至っては地球上から撲滅することができました。『薬』の世界における貢献は言うまでもなく計り知れないものです。
 ‘ペニシリン’は第二次世界大戦後の日本の目覚ましい復興発展を影ながら支えた‘功労者’だと言う学者もいるほど、確かに薬は多大なる恩恵を私達にもたらしてくれました。しかし、高度成長時代が一段落した頃から、一転して日本の医療は『薬漬け』と騒がれ始めました。『薬』の氾濫は、豊かさがもたらした負の遺産の一つかもしれません。薬の持つ力は現代人の欲求その物です。‘簡単’‘便利’‘安価’「苦痛から一刻も早く逃れたい」「楽こそ一番」「すぐにでも効果がなければダメ薬だ」等々。
 製薬会社は新薬開発にしのぎを削る競争をしています。何故ならば、新薬一つが当たれば莫大な儲けを得ることができるからです。それだけ現代人は「『薬』に飢えている」といても過言ではないのでしょう。しかし、ここ2,30年の『薬』のめざましい進歩とその恩恵の影で、私達は「人間は薬漬けとされてしまった」と言えるような呪縛を掛けれてしまったのではないでしょうか。
 現代は、病気薬としてだけではなく食材にも色々な『薬』が使われています。最近は幾分消費者の関心が高いせいで無分別に使われていた抗生物質等や農薬(成長ホルモンなど)などの使用を控える傾向にありますが、今や食材は『薬』無しでは私達の食卓に十分行き届かない状況にあることは間違いありません。現代では「生きること」は、知らず知らずに『薬』を飲んでいることに間違いない状況なのです。
 そして“『薬』万能神話”を生みだしてしまったような気がします。
 筆者は、現代の憂うべき事の一つの様な気がしてならないのです。

 もちろん、今問題とされているAIDSや奇病,難病などに本当に悩んでいる沢山の患者さん達にとっては、一刻も早い新薬は必要欠くべからざるものです。

 この様に私達の周りには『薬』が溢れているのですが、とは言うものの、いざ病気になってしまえばやっぱり『薬』に頼らざるを得ません。
 でも薬を使わなくて済むのならそれに越したことはありません。
 実際、医療の現場では必ず薬を使っているのでしょうか?。いいえ、実は本来の『薬』ではなく『薬』と称して『薬』を使わず治療することがあるんです。
 例えば、‘痛み止め薬’の代わりにただの‘ビタミン剤’を処方する『偽薬』(にせの薬)処方と言います。患者さんは痛み止めと信じて服用するのですが、何故かただの‘ビタミン剤’で痛みが治まってしまうのです。
 この事を【プラシボ効果】又は【プラシボ薬】と言います。この【プラシボ効果】を利用することは、ある意味患者さんを騙すことです。しかし、余計な薬を飲まずとも病気が治ればそれに越したことはありません。【プラシボ効果】を実際の効果として益を得る為には言うまでもないことですが、医師の元の適切な対応として行われる処置でなければなりません。
 “素人の生兵法”的な扱いをしては逆に危険ですので念のため・・・。
 【プラシボ効果】は‘心理効果’の一つと言えます。‘心理効果’とは単に精神力によるというものではありません。‘心理効果’とは脳と自律神経(交感神経と副交感神経)との連携で生じる効果です。ですから『病は気から』と言う諺(ことわざ)は理に適っているのです。これは、よく言われる『自己治癒力(免疫力など)』を高めたり衰えたりさせるものなのです。
 【プラシボ効果】が『自己治癒力』を高めることで病気を治せるのならば、これこそ一番の治療方法ではないでしょうか。



古賀先生

 

BACK