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10.17.2002

No.0170

抜歯処置も外科手術の一つです!
『恐るるに足らず、されど侮るなかれ』

 歯を抜いた経験のある方で、時に抜歯処置の後の半日〜一日程の間に‘体のだるさ’や‘熱っぽさ’を感じたことがありませんでしたでしょうか?。
 通常健康な方であれば、この様な症状は直に治まりますので全く心配はありません。
 何故、一時的にこの様な症状を覚えることがあるのでしょう?。それは抜歯処置を受けた直後の体内では、一時的に【免疫反応】が盛んになる為なのです。
 抜歯処置などの外科的処置(正確には観血処置と言います)つまり出血を伴う処置を行うと、口の中の常在細菌(バイ菌)の一部が抜いた所の傷から血管内へ一時的に進入してきます。この様な状態を【菌血症】と言います。つまり血管内の血液中に細菌が居る事を言います。
 本来、血管内は普段の正常な健康状態では、無菌状態(細菌は存在しません)です。ですから、抜歯処置などによって結果バイ菌が血管内に進入してくると血液の免疫細胞が防戦し始めるのです。
 最後には“免疫細胞軍”が“バイ菌軍”に完全勝利をして事なきを得るわけです。但し、この戦いの間、人は体がだるかったり熱っぽさを感じたりするのです。

 ところで、いつもこの“免疫細胞軍”が勝利するとは限りません。もし、“免疫細胞軍”が負けて“バイ菌軍”が勝利してしまったならば、それは命に関わることにも成りかねないのです。
 つまり、免疫能力の低下した状態の人はうかつに外科処置を受けては『危険』なのです。

 先に述べましたように、通常はその人のもつ免疫能力によって、この様な血管に進入してきた細菌は、数分から数十分で死滅させられるので、健康な人では心配はありません。 一過性に起こる【菌血症】は、それ自体は病気とは言えません。どうぞ安心してください。
 しかし免疫力の低下した状態(体に抵抗力のない場合)では抜歯後に細菌が死滅されずに重特な感染症【敗血症】を引き起こすことがあります。
 【敗血症】に成ってしまった方の中には、【敗血症ショック】を起こして死亡する場合もあります。{【敗血症ショック】に陥った患者さんの内、死亡に至る割合は約40%}
  現在の日本において【敗血症】の発生率は極めて低いのですが(健康な人に発症することはきわめてまれ)一旦発症してしまうと治りは極めて悪い病気なのです。

 早い話が外科処置を受けるべき人は、体調を万全にしておくことが大切であり、そうであれば何も心配はないのです。
 しかし、仕事の都合や家庭の都合など時間の制約上少々無理しても抜歯ぐらいならと軽く見て、体調が思わしくないにもか替わらず抜歯処置つまり外科処置を受けてしまうのは、お勧めできません。

 当たり前のことですが、抜歯処置を受けることについての諸注意を挙げておきます。
 1;処置前には出来るだけお口の中を 清潔にし細菌数を減少させておく
 2;処置前夜には十分な睡眠をとり、食事もきちんと摂取しておく
 3;術後(場合により術前)には主治医の指示通りに薬(主に抗菌薬)を服用する
 その他、体調がすぐれない場合には遠慮せずに主治医に当日のコンディションを伝える事も大切です。風邪気味、睡眠不足、過労気味、発熱時には抜歯は避けた方がよいでしょう。

 糖尿病や心臓病,免疫疾患など特異的な持病を持っている方は、必ず初診時に主治医に申し伝えておくべきです。決して侮ってはいけません。

 抜歯は立派な手術の一つです。抜歯処置を侮ってはいけません。ですが、決して恐れることはありません。今日のこのコラムをお読みになって心得ておけば心配無用です。
 もし又、歯を抜くことになったら、処置のその日にあわせて体の調子を整え、主治医を信頼し、リラックスして臨みましょう。



澤田先生

 

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