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9.26.2002

No.0167

一口に【入れ歯】と言っても・・・!

 日頃“歯科なんでもコラム”を愛読して頂いておられる皆さんの中で、何等かの理由でやむなく抜歯処置をお受けになり、歯牙欠損の状態になられている方もおられると存じます。失われた部分には、【入れ歯】が入っていますか?。たぶん、多くの方は何らかの【入れ歯】(正確には歯科補綴物と言います)を、既に入れられていると思います。
 しかし、希なことではありますが、私達歯科医院を訪れる患者さん方の中に、歯を抜いてそのまま放置されている方も見かけます。
 もしや、皆さんの中にはおられませんか?。

 我々歯科医は、罹患した歯は極力抜歯をせずに温存するように努力しますが、歯槽膿漏が原因でグラグラになった歯や根まで進行した深在性の虫歯はやむなく抜歯をせねばなりません。
 罹患歯の治療は抜歯処置にて一段落するわけですが、そのまま放置しておくことは決して好ましくありません。よって次の段階の処置として、欠損部の“補綴処置”を行います。その際、どのような歯科補綴物を入れるかを患者さんと共に考え決定しなければいけません。

 そこで、現在歯牙欠損をそのままにしてしまっている方、又は今の歯科補綴物に今ひとつ納得のいっていない方、将来万一歯牙欠損となった場合を想定して予め知っておこうと思われている方々の為に、少しでも参考になるようなお話しをしてみようと思います。

 そもそも、歯牙欠損を放置していると、どうなってしまうのでしょう?
 1)欠損部のすぐ脇の歯は、支えがない為に傾いてしまう。
 2)欠損部に上下的に対合する歯は、かみ合わせの相手が無くなる為に飛び出てくる
 3)歯列や噛み合わせが、より悪くなる為に虫歯や歯槽膿漏を一層悪化させる原因となる。
 4)噛み合わせの変化により顎関節症や肩こりの原因となる。
 等々です
 「1本ぐらい歯がなくても、ものは噛めるからそのままでいい。」と思ってらっしゃる方は、ざっとこれだけの弊害があることを自覚しておいて下さい。

 そこで、歯牙欠損を放置せず適切な対処をしなければ成りません。この対処が“歯科補綴物の製作と装着”となります。
 歯科補綴物を一般に大きく分けると、取り外しのできる“可撤式義歯”(いわゆる部分入れ歯)と取り外しのできない“固定式義歯”(いわゆるブリッジ)があります。
 可撤式義歯には‘アタッチメント’という特殊な部品を用いたものやマグネットを使うものもありますし、固定式義歯のブリッジに似ていても取り外せるものもあります。
 固定式義歯には、自分の歯を利用するのではなく人工の歯根をアゴ骨に埋めてそれを土台として作られる‘インプラント義歯’というものもあります。

 さて、一般的な部分入れ歯ブリッジを比較してみますと、双方にはそれぞれに利点と欠点があります。

 *部分入れ歯の利点と欠点
   利点:入れ歯を入れるための大掛かりな治療をする必要がない
      入れ歯の為に健康な歯を削ることは無い
      お口の外へ取り出せるので清掃がしやすい
      費用は比較的安価である
   欠点:歯ぐきでも支える為に、入れ歯の大きさが大きいので違和感がある
      精神的に老けた気分になる
      取り外して清掃する事が煩わしい

 *ブリッジの利点と欠点
   利点:支えの歯に接着させて固定してしまうので、しっかり噛むことができる
      口の中の違和感が少ない
   欠点:入れ歯の為に、健康な歯を削る場合がある
      場合によっては健全な神経まで取らなければいけない場合もある
      費用は比較的高価である
      丁寧な清掃をしないと気づかぬ内に支えの歯が痛んでしまうことがある

 歯科補綴物の治療計画には以上のような要因をいろいろと考えて、最終補綴物をどの様なものにするかを決定するのですが、正直言って未経験の患者さんにとっては難しい決断だと思います。
 とかく歯科医の言いなりに決めているのが現状かもしれませんが、自分にとって最優先にすべき点(例えば、「歯は極力削りたくない」「違和感はできるだけ少ない方がいい」など)をハッキリ決めて、それぞれの利点欠点のバランスを考えて最終決断してください。
 歯科補綴物は、元々の自分の歯には適うものではないのです。

 言うまでもありませんが、一番大事なことは歯を失わないように日々の健康管理を怠らないことです。が、不幸にも歯を失うことになった方は、そのまま放置するのではなく後処置の“補綴処置”をないがしろにしては決して良くありません。
 主治医とちゃんと話し合って決めて下さい。そして、補綴処置が一旦終了しても決してそのままではいけません。定期的なメンテナンスを必ず受けるようにしましょう。



山本先生

 

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