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6.20.2002

No.0153

【第三の歯】(クローン歯Part2)

 去年の「歯科なんでもコラム」(0090掲載日2001/4/5)において「クローン歯」についてコラムを書かせて頂きました。「歯科なんでもコラム」を愛読いただいております皆様は、きっと記憶にはあると思いますが、更に具体的な事例が最近マスコミに登場したので(クローン歯Part2)として取り上げてみようと思います。

 つい最近の話ですが、今年6月5日の毎日新聞(平成14年6月5日東京版14面)を読んで大変驚きました。「ある会社が再生医療事業として歯の再生を行う」という記事が載っていたからです。
 ここにその内容を挙げてみます。
 【第三の歯】とは、患者自身の親知らずの付近にある幹細胞を大量に培養して、歯胚(歯の素になる細胞組織)を作り、型の中で歯の形にまで育てる。これを歯の抜けた穴に埋め込んで歯の再生を完了させるものです。これにより天然の歯と同様の刺激を脳に伝えることができるもので痴呆などの予防になる。 とのことでした。

 本当に、この様なことが現実となっていくのならば、大変すばらしいことだと私は思いました。

 しかし、歯科医師としてまだ幾つかの問題を感じています。
 歯とは、全部同じ大きさをしてはいなく、‘前歯’‘犬歯’‘小臼歯’‘大臼歯’‘左右上下の違い’と生えるべき場所によって様々の形と大きさがあるます。
 そのため、その提唱されている歯胚から必要とされる場所の歯を作り出すのは、決して簡単なことにはまだ素直に思えません。
 仮に、要する歯が巧くできたとしても、唯単にそれを植えれば歯の機能を回復するものではないと考えます。何故なら、歯の機能は、一種の感覚受容器のようなものですので、咬むなどの運動感覚の刺激を脳に伝えるには、歯と歯を支えている骨の間に介在する空間(歯根膜空)と歯と骨をつなげる結合組織繊維(シャーピイ繊維)の働きにより刺激を伝える働きが重要な役割となっているのも無視できないのです。
 これらの組織も本物と同じ位の働きをするように再生できなければ意味がないような気がします。

 もちろん、以上のような問題点も配慮をなさって研究しているのだと思います。しかし、私としてはなるべく早くこの計画が実現されることを待ち望んでいます。
 そして、歯がなくて物が噛めなくて困っている患者さんや入れ歯で悩んでいる患者さんの悩みを解決できたらいいなと思っております。



荻野先生

 

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