10.28.1999

No.0015

「噛む」のメカニズム

 人間は物を食べなくては生きては行けません。食べるということは先ず食物を口で噛むことから始まります。

 この噛むという動作は、無意識にできる極く自然な行動なのですが、実は体にとって大変重要な効果のあることが解ってきたのです。

 噛むということは、人間をはじめとする哺乳動物における物を食べる時に行われる基本的機能運動ですが、単に上下の歯を合わせる単純な上下運動の動作ではありません。噛む為のシステムが脳の中にきちんとプログラムされているのです。

 このシステムには、3つの大きな機能があります。

 第1に、直接物を噛み潰す“歯”,歯を支える“顎”,顎を動かす“筋肉”,その他“顎関節”,“唾液腺”等のハードの部分があります。

 第2に、感覚入力系つまり口の中の感覚を脳に伝える機能があります。簡単に言うと口の粘膜の痛い・熱い・冷たい・圧覚感や舌の感覚の甘い・辛い・苦い等の感覚、それから噛む為の筋肉の中にある顎の動きを感じ取る各部分から脳に繋がっている感覚神経があり、その情報を脳に伝えます。

 第3に、脳に伝わってきた感覚情報を処理して噛む為の筋肉に運動指令を出す中枢神経系があります。

 この3つの機能が互いに密接な関係をはかり噛む動作をコントロールしているのです。これにより脳に入ってくる刻々と変化する感覚情報を的確に処理して、それに見合った力で噛むことが出来るようになっているのです。

 以上の様に「脳」と「噛む」ことは密接な関係に有るということが解って頂けたと思います。ですから、仮に脳に障害が起きると正常に噛むことが難しくなり、全身への2次的・3次的な問題も起きやすくなるのです。

 ところで、この「噛む」という脳のシステムが正常であっったとしても、歯並びが悪いとか顎の関節に異常があるなどの原因で「噛む」ことが正しくできなければ、やはり前述同様に全身的に悪影響が出てくる事になるのです。が、具体的にどの様な影響が出て来るのかに点きましては、次回のコラムで御紹介いたしたいと思っています。
お楽しみに・・・


小田先生

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