writing : wahaha's members / 毎週木曜日更新

画面サイズを最大化にして、お読み下さい。

4.11.2002

No.0143

歯科治療と契約

 普段行われている治療は、『社会医療保険』が使われる【標準治療】といわれているものです。この【標準治療】は厚生労働省の監督管理の下、一定の制約を受け経済的にも管理されています。俗に「保険診療」といわれているものです。
 しかし、医療技術などの進歩のスピードが加速度的な分だけ、この【標準治療】だけでは現実の医療は十分でないとされている場合があります。その様な場合、『医師個人の医学的裁量の範囲で【標準医療】の範囲を越えた、そして医師と患者の当事者同士で納得できれば自由な治療を利用提供することができます』 これを【自由治療】と言います。俗に「保険外診療」や「自由診療」などと言われているものです。この【自由治療】は歯科に限らず医科でも多く行われています。

 さて【標準治療】と【自由治療】との本当の違いは何でしょう?。

 【標準治療】は病気の種類から病気に関わる治療方法, 治療薬, 治療器機の使用, 治療費などかなり細かい‘決まり事’があります。
 例えば『歯科心身症』何年も前から注目されていた一つですが、それに関する「保険治療」はこの3月までありませんでした。

 【自由治療】は一口で言ってしまえば、『保険の利かない治療』のことです。
 例えばガン治療をする場合“保険では認められていない、しかし、治療効果はかなりあるという‘抗ガン剤’の治療”を行う場合は【自由治療】となります。
 歯科治療では、良く知られている‘ポーセレン冠’や‘インプラント補綴’や‘矯正治療’等々は【自由治療】です。
 そして、典型的に【標準治療】とは異なっていた点は、【自由治療】を行う場合に前もって患者さんと医師との間に《医療契約》を取り交わすことが常であると言うことです。
 【標準治療】は“お任せ治療”と言うイメージに対して、【自由治療】は“メニュー選択治療”と言ってよいと思います。
 患者さんの治療希望の範囲が、より広いものが【自由治療】と言えるのだと思います。
 それゆえ、「治療前の病気についての認知」「治療方法についての理解」「治療の目的意識」「治療の長所短所」など、患者さんと医師との間で、より詳しい情報のやり取りと互いの同意を必要とするものとなります。それが《医療契約》だと考えます。

 さて、昨今医療行政において、契約意識というものは‘時代の価値観である情報開示の要望に応える’のには良い方法であると認識され始めました。
 【標準治療】つまり「保険治療」にもこの《医療契約》のシステムが、歯科では平成12年3月から取り入れられていました。それが‘かかりつけ歯科医’です。
 この‘かかりつけ歯科医’は《医療契約》と認識してよいと思います。
 【標準治療】は範囲の限られた治療ではありますが、その中でも選択できる余地がある程度あると言うことを知ってください。
 ですから、これからの「保険治療」でも“患者さんの選択意志”をちゃんと歯科医師へ伝え《医療契約》を取り交わすことは重要な事と、患者さん自身の認識を新たにすることが大切になってくるのです。

 一般医療においても手術をする際に患者さん本人と御家族の方に‘承諾書’なるものを 書かされて捺印された経験のある方は多くないと思います。
  《契約》というと医療とは縁のないものだと思われやすいものですが、患者さんと医師との信頼関係を文書で互いに理解することで、よりよい治療を行っていく為には‘大切なお約束’なのだということを、是非に御理解頂きたいと思っています。



山本先生

 

BACK