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3.21.2002

No.0140

歯ごたえの話

 食べ物の【美味しさ】を味わうとき、‘甘い’‘辛い’‘塩っぱい’などの『味』を区別するのは味覚という感覚ですが、『歯ざわり』というのもなかなか大切なものです。
 宇宙飛行士の食事も、最初はチューブに入ったペースト状のものでしたが、今は形のあるものにだんだん変わりました。これは、柔らかくて噛む必要のない歯ごたえのない食事では、「食べた気がしない」からでしょう。
 さぬきうどんをはじめ、麺類のおいしさは麺のこしにあるといわれています。では、どうやって、私たちはそれを感じているのでしょうか?

 『歯ざわり』とか『歯ごたえ』という感覚は、歯の感覚と、噛むための筋肉(そしゃく筋)の感覚から成り立っていると考えられています。
 まず、この場合の歯の感覚とは、虫歯になったとき、痛く感じる感覚とはまた別のものです。そして、歯の感覚は、歯の表面のエナメル質で感じるのではなく、歯の根の周りをおおっている膜(歯根膜)の、圧力を感じるセンサーで感じます。
 また、そしゃく筋の感覚とは、顎を動かす筋肉の中にあるセンサー(きんぼうすい)が感じる感覚のことです。筋肉の感覚はたいへん敏感です。たとえば階段を上がっていて、高さの不ぞろいのところがあれば、目でみてもわかりにくいわずかな段差でも、すぐに歩く感じでわかるはずです。それは足の筋肉の感覚が働いたからなのです。
 うどんが歯に当たったことは、歯根膜のセンサーが知覚し、そのときのそしゃく筋にかかる力を、筋肉のセンサーで知覚します。それらの情報が大脳のコンピュータで総合的に判断されて、うどんのこしがわかると考えられています。

 では、全部歯が無くなった‘総入れ歯’の人の場合はどうなるのでしょう。
 この場合、入れ歯を支える歯肉のセンサーが歯根膜のセンサーの代わりをすると考えられますが、感度がそうとう悪くなるようです。
 さぬきうどんをはじめ、食べ物のおいしさは、やはり歯が健康でなければ判りにくいのではないでしょうか。

 人生八十余年の現在、心身ともに健康でなければ長寿の価値も半減すると思います。
 なんでもおいしく食べられ、楽しく語らい、健康で明るい毎日が送れるよう、みなさんもぜひ、お口の健康に関心をもって、末長くご自分の歯が使えるように大切にしていきましょう。



野中先生

 

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