私の前回のコラムで、後天的な原因による変色歯についてお話しました。 【歯の色】の異常と見られるものには、歯が生える前に既に運命(歯の色や質の異常)が決まっている場合があります。
そこで今回は、このことをお話する事にします。
それは『薬の副作用によって永久歯の変色を生じさせたもの』と『薬以外の原因によって、歯質の石灰化を不完全とさせたもの』です。
副作用をもたらす薬とは“テトラサイクリン”(種類は幾つかあります)のことです。 日常よく見られるグレー褐色の色をした歯は、この“テトラサイクリン”製剤の服用の結果、副作用として現れた歯です。
薬以外の原因とは、環境や食生活など複雑な関わりにより生じたものと思われています。
斑に白濁やデコボコな表面をしている歯は、この様な歯その物の育成が阻害された結果として現れた歯です。この様な歯は[石灰化不全症]と称します。
歯の成長期(永久歯の元が乳歯の下で育っている最中に)にあたるときに、不用意に抗生物質の一種の“テトラサイクリン”を服用すると、せっかく生え変わって出てきた永久歯が暗褐色の歯となってしまっています。
“テトラサイクリン”系の抗生物質には、蛍光粒子が含まれていて、この抗生物質を飲んだ時期が歯の成長期と重なると、その蛍光粒子が歯質に取り込まれ、歯の萌出と同時に暗褐色の歯が出現してきます。その程度は人によってまちまちですが、重症の場合はお歯黒状態の場合もありえます。
一般的に自分の歯が「グレーぽい」かまたは「黒い」と感じている人は、この“テトラサイクリン”による場合が多いようです。
特に前歯においては目に触れやすい場所だけに、心ひそかに気にしてる方が多いと思います。
[石灰化不全症]というのは、やはり、歯の成長期に何らかの理由(例えば、病気)で歯の成長が一時的に阻害され、木の年輪のように透過性のない白色,茶褐色の縞模様,あるいは斑点が出てきます。
これら、[石灰化不全症]と“テトラサイクリン”製薬による変色歯の歯は生活歯なので,歯の裏から漂白剤を詰めることが出来ませんが、現在では、技術,薬品の進歩によってこのような歯の変色は、色、形共に正常に近い状態のまで回復する事が可能になっています。
出来うれば、歯の成長期における薬剤の服用には充分な慎重さが必要です。
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