皆さんは、【笑気麻酔】をご存知でしょうか?。【笑気麻酔】の“笑気”とは、硝酸アンモニウムを240℃に熱することで生じる亜酸化窒素という“ガス(気体)”です。
この“笑気ガス”は、吸引すると一時的に知覚を麻痺させ痛覚も消失させるという効果を持ちます。1840年頃アメリカの大学生の間では、このガスの効果を利用した‘笑気ガスの吸入パーティー’が盛んに行なわれていました。
それからヒントを受けたアメリカの歯科医‘Horace Wells’が1844年に、笑気ガス吸入下で無痛的に抜歯をしたのが、医療への応用の始まりだったのです。
正しくは、【笑気吸入鎮静法】と言い、この麻酔方法は以降、現代医学の麻酔技術に多大な貢献をしてきました。
発端は今のシンナー遊びに似て‘悪趣味なお楽しみショー’ではありましたが、『ひょうたんから駒』と言いますか、一転医療の重要な治療方法となったのです。
一般的に歯科医療に使用されている【笑気吸入鎮静法】は、100%の酸素と30%の笑気の濃度を患者さんの鼻へマスクやエアウエイを装着し、[至適鎮静]に達した後に歯科処置をします。
[至適鎮静度]の指標としては、個々の患者さんに差はありますが、
(1)、身体が温かくなったような気がする。
(2)、ぼーっとしてきた。
(3)、手足の先が痺れたような気がする。
(4)、お酒を飲んだときのほろ酔い気分になる。
では、歯科治療において【笑気吸入鎮静法】の適応症例は、
(1)、歯科治療において恐怖心を抱いている方
(2)、虚血性心疾患の既往のある方
(3)、嘔吐反射がある方(お口の中に器械等を入れてゲ−ッとなる方)
とくに歯科治療を訪れる患者さんは、我々歯科医が想像する以上に治療に不安や恐怖を抱いていることは少なくないと思われます。また、循環器系に異常にある患者さんでは、歯科治療の精神的なストレスで循環器系が増悪する可能性もあります。
このような不安や恐怖、ストレスを和らげて患者さんを‘歯科治療に協力させる方法’が、『精神鎮静法』であり、【笑気吸入鎮静法】が含まれます。
(他に、静脈内鎮静法があります。)
歯科治療では、麻酔注射をして削る痛みや、抜歯する際の痛みを取るわけですが、残念なことに【笑気吸入鎮静法】では、鎮痛効果は不完全なので、痛みを伴う治療では麻酔注射(=局所麻酔)を併用しなければなりません。
「歯の治療はしたくても、治療に対する恐怖や不安感が強くて、なかなか治療に行けなくて困っている。」と言う方は、【笑気吸入鎮静法】を行ってくれる歯科医院をお探しになられるのも‘一つの方法’ではないかと思います。
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