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12.13.2001

No.0126

“Fross or Die !”

 従来、歯科の二大疾患であるウ蝕と歯周病は、直接的に人命を奪うことはないと信じられてきましたが、近年、口腔感染症(ウ蝕と歯周病)は、全身疾患のリスク因子であることが明らかとなっています。
 口腔感染症によって、心筋梗塞、肺炎、糖尿病、出産児の体重減少、骨粗しょう症、肥満などが引き起こされ、時として人命を奪う事例も報告されています。
 20世紀の歯科医療は、歯科材料と歯科技術の飛躍的な進歩進展により高度な歯科医療が支えられてきました。今後とも、さらなる改善が必要であり重要な課題であることは言うまでもありません。
 しかしながら21世紀を迎え、歯科疾患の病因論的研究(ウ蝕と歯周病は、なぜ発症してしまうのか原因を突き止める研究)が進展しているなか、生命科学的なアプローチ(生命を受けるために、基になる遺伝子の研究)を応用した歯科医療体系の構築も必要であり、その実務が急務であることも指摘されています。
 そして、高齢者社会を迎え、歯を治すだけでなく口腔感染症を制御することで、また低下した口腔機能を回復することで身体の健康を守りQOLを高めることを歯科医療の業務として実現させることが必要なわけです。

 口腔感染症が全身疾患の引き起こすメカニズムについて、心不全(動脈硬化症)を取り上げてみます。
 一般的な心筋梗塞は、高コレステロールによる動脈硬化によって起こるわけですが、一方、口腔感染症による心不全は、[ウ蝕原因菌]のStreptococcus mutansやStreptococcus sanguisなどの連鎖球菌が心内膜炎を起こしたり、[歯周病原菌]でも臨床例が報告されています。
 一例を申し上げれば、歯肉が腫れて来院し、切開・排膿処置を行い、抗生剤の投与をした日から3日の後、突然「心不全」で死亡してしまった患者さんの報告があります。
 この患者さんの病理解剖報告によりますと、心臓血液と膿瘍(腫れている歯肉の中)から[歯周病原菌]が検出されているそうです。

 今回の命題であります“Fross or Die!”は、今アメリカで言われていることです。 日本語では『あなたは【歯みがき】をしますか、それとも、しないで【死】にますか!』ということであります。
 つまり口腔感染症が全身疾患を引き起こし悪化させることは常識になってきています。

 我々も一般の人達に充分啓蒙していくことが急務であるわけです。



河田先生

 

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