歯の咬み合う面(臼歯の咬合面や前歯の切縁)が擦れて削れた状態を【咬耗】と言います。一般に【咬耗】は正常な歯を持ち正常な咬み合わせを持っている方ならば、長期にわたって自然に生じてくるものです。ですので、中高年の大抵の方は【咬耗】のある歯を持っています。これを生理的咬耗と言います。
しかし最近、年齢に似合わない【咬耗】のある若い患者さんを多く見かけるようになりました。長年培うように生じた【咬耗】は、基本的に問題ではありませんが、急に生じた場合や若年者においては放置できない問題となります。
さて、【咬耗】はどの様にして生じるのでしょう?。それは、食事の際に生じるのではなく就寝中や緊張しているとき集中しているときなど無意識下で生じます。いわゆる「歯ぎしり」によって生じます。この「歯ぎしり」を正しくは‘ブラキシズム’と言います。
‘ブラキシズム’には大きく3つの種類があります。
1)グラインディング
上下の歯を咬み合わせたまま左右に横滑りさせて「ギリギリ」と音を立て擦り合わせます。
いわゆる「歯ぎしり」です。
患者さんの約20%以下ではありますが、治療を行う上で大きなリスクを伴います。
そして、ご本人が気づいていない点が、ブラキシズムをしている方の治療の困難さを
理解しにくい原因となっています。
2)タッピング
まるで物を食べているかのように上下の歯を打ち合わせ「カチカチ」と音を立てます。
3)クレンチング
上下の歯を咬み合わしたまま食いしばります。あまり音は出ません。
‘ブラキシズム’による【咬耗】は病的なものです。
【咬耗】は、歯の種類や質、歯の出てくる位置(萌出部位)、咬み合わせ形(対合関係)、咬み癖(咀嚼形態)、咬む力(咬合力)と時間、生活環境や食生活、年齢、性別、口腔習癖、心因的問題など、様々な因子が関与するものなので、その程度にはかなり個人差があります。
‘ブラキシズム’が原因とされる口腔内の症状は、咬合性外傷、歯の早期接触、動揺、異常摩耗,破折、浮遊感や違和感、疼痛、口唇、頬粘膜、舌などへの歯列の圧痕、歯肉粘膜の違和感。口腔外の症状としては、頭痛、偏頭痛、肩こり、腰痛、顎関節の疼痛、開口障害、違和感雑音、咀嚼筋の疼痛、肥大、顎角項の張りのある形態(エラ)などが生じます。
‘ブラキシズム’の治療は未だ決定的なものはありません。しかし大切なことは、自分自身が‘ブラキシズム’をしているかどうかを自覚することです。それを軽減させるためのスプリント療法や自己暗示療法、また、ストレスの少ない生活を送る努力も必要です。
特に神経質になる必要はありませんが、お口の中の状態が体に影響する事もありますのでお近くの歯科医院で相談してみるのもいかがでしょうか。
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