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9.6.2001

No.0112

環境ホルモン  歯科治療

 今、巷で話題になっている『環境ホルモン』は、その何種類かが歯科治療(特に、ムシ歯治療に使われる材料)と関わりがあると言われています。
 私達(患者さんも歯科医師も)は、この問題を軽視してはいけません。しかし、決して過敏になりすぎて歯科治療そのものを拒絶すべきものでもありません。でも受け手である患者さんにとっては不安なことです。
 では、この問題にどう対応していけばよいのでしょう?。

 そこで、現状と対策をお話しようと思います。

 『環境ホルモン』とは、正確には【内分泌攪乱物質】と言われる化学物質のことです。お馴染みになった‘ダイオキシン’などその全てが、元々自然界には存在しては居なかった物です。産業文明の発達に伴い、石油などから人為的に作り出された化学物質なのです。

 歯科治療に用いられる材料にも“レジン系材料”と言われる石油化学生成品(高分子有機化学化合物)が多くあります。1996年のOieaらの報告を契機に、この“レジン系材料”の生体安全性について、当然歯科界においても真摯に対応すべき状況となってきました。

 具体的に検証されているなか、解ってきたことは・・・
 @(*付加反応や縮合反応により)合成されるこれらの“レジン系材料”が、その製造の過程において、未反応の反応物や副生成物などの不純物を含んでしまっている。
 Aその未反応物の残留した物が、唾液中の酵素(エステラーゼ)によって、体内へ溶出させている可能性がある。
 B未反応物には未知の成分がいくつか含まれており、検証を急がれている。
 等です。

 歯科治療において、これらの“レジン系材料”を切り離してしまうことは、今現在不可能となっています。つまり、“レジン系材料”無しでは、歯科治療は成り立たないのです。
 ではどの様に対策を行っていけばよいのでしょう。

 対策要点は、3点あります。
 1)複数の製造販売業者の多種多様のレジン系材料が業界にて出回っています。
  その中でも『解っている限り人体への影響の最小の物』を選択して歯科治療に使用する。
  歯科医師が安易に購入価格を優先したり材料選択の検証を、めんどくさがらないことだと思います。
 2)使用量は、必要最小限度を遵守する。
 3)最終段階での反応を最大限に行うことで、残留不純物を最小限にする。
  例として、虫歯の穴に材料を詰める際には、充分以上の反応(時間をかける事等)を行う。

 以上は、歯科医師自身が絶対に行うべき事です。

 では、治療を受ける患者さんはどう対処すればよいのでしょう?。
 1)先ず、使用材料についての説明を聞くことです。
  快く答えてくれる歯科医師ならば先ずは治療をゆだねても良いと思います。
 2)実際に治療を受けるその時、できるだけ歯科医師の施術に協力することです。
  不用意に唾液が混ざったりしてしまうと、不純残留物が残りやすくなります。
 3)治療を受けた後少なくとも2〜3時間は、食事や間食又はアルコールなどは止めておくことが
  望ましいでしょう。
  この材料は、診療室での治療後も完全反応完了までに時間を要します。
  残留物の溶出しやすいことは、避けるべきですね。
 4)歯ぎしりなど咬耗の強い方は、咬耗予防の為の補助治療をされる方が良いでしょう。
 5)そして、定期検診は欠かさないことです。

 以上が患者さんのできる対策だと思います。

 最後に
 虫歯の治療や入れ歯の治療などを、決して安易に怖がる必要はありません。
 無知で無策が一番怖いのです。
 皆様の今後に少しでもお役になれば幸いです。

*:2,2-bis [4-(2-hydroxy3-methacryloyloxy-propoxy)phenyl]propane(Bis-GMA)、
  2,2-bis[4-(2methacryloxyethoxyphenyl]propane(Bis-MEPP) 等のベースモノマーは、
  2,2-di(4-glycidyloxyphenyl)propane(BADGE)へのmethacrylic acid(MA)の付加反応や
  bisphenol A dialkylalcoholのMA あるいはMA chlorideの縮合反応により合成される。

参照:神奈川歯学35-4,201〜214,2000


古賀先生

 

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