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8.2.2001

No.0107

矯正歯科治療の【保定】について

 明治維新以降‘文明開化’の名の下に、日本には様々な欧米の文化「舶来(はくらい)」が取り入れられてきました。第二次大戦後以降、特にアメリカの生活文化が‘第二の文明開化’とも言えるほど取り入れられてきました。
 これは食生活や生活習慣だけではなく、“医療の世界”にも大きな影響を与えています。歯科医療についても例外ではありません。歯科医療の中では【矯正歯科治療】の技術はアメリカの影響の強い「舶来」の代表的な一つといえるでしょう。

 “矯正歯科治療の受診率”において、アメリカは日本に比べ遙かに高く、子供が生まれると“矯正歯科治療の為の積立貯金”を始める家庭も少なくないそうです。
 我が日本では“矯正歯科治療の受診率”は上がっているかどうかはわかりませんが、私が毎日患者さんと接する中で感じられる上では、“矯正歯科治療の必要性”に対しての関心は確実に高まってきていると実感してます。
 しかし、その反面【矯正歯科治療】に対して、誤解を持たれているところも多々見受けられます。そこで、その誤解を解く鍵の一つと考えられる矯正治療のポイントは無いかと考えてみました。
 と言うわけで、今回は【矯正歯科治療】の治療結果の優劣を最も左右する要因と言って過言ではない“【保定】(ほてい)処置”について考えてみようと思います。

 【矯正歯科治療】は何年も掛けて‘歯並び’や‘咬み合わせ’をきれいにしていきます。この過程(歯を実際に動かしていく期間)は、皆さんも良く知っている、あの〈銀色の装置〉を歯にくっつけて針金を張るあの状態です。(最近では透明な物、歯の色に近いものもあります){尚、治療法の違いによって、入れ歯のような装置を使って歯を動かす場合もあります}
 この段階が終わり装置をはずして矯正治療の中での“歯を動かす治療”は終わります。
 しかし、矯正歯科治療にとって大切なのはここからなのです。”後もどり”というきれいに並べた歯が元の位置にもどろうとする、今までの苦労を水の泡にしてしまうような反作用と戦っていかなければならないのです。
 そこで必要になってくるのが、保定装置なのです。つまり動かした歯を元にもどらないようにするための「保定」という治療期間の始まりです。
 “保定”は一般に保定装置(リテーナー)と呼ばれる前歯の裏に張り付けるものや入れ歯の様な取り外し式のもの、スポーツ選手が使用しているマウスピースの様なもので行う事が多いのですが、取り外すことができるというこちがネックになり患者さんが装着してくれなければ何にもならないのです。
 又、保定装置を装着するだけでなく、矯正治療を行った歯科医院への定期的検診が必要になってくるのですが歯を動かす治療が終わり、装置が外れた開放感から定期的な検診を受けなくなるケースが少なくありません。
 【矯正歯科治療】の歴史の中でも有名な先生の言葉に「保定管理だけを担当してくれる歯科医師がいれば、矯正治療にかかった費用の半分をあげても良い。」という言葉があります。
 この言葉の意味するところは、歯を動かしている過程も大切だけど、歯を動かした後のケアーは、それ以上に大切なものであるということです。特に成長過程にある患者さんつまり中学生や高校生の間に矯正治療を終了した患者さんは、より治療後のケアーが大切になってきます。

 【矯正歯科治療】は「金具が外れたから、治療は終わり。」ではありません。
  「保定処置によって歯列及び咬み合わせの安定が図られたことの確認が、なされないと矯正歯科治療は終わりには成らないのだ。」ということを知っておいて欲しいのです。
 その心得を持っていれば、「矯正治療で一旦はきれいに治ったんだけれど、結局元に戻っちゃった。」「矯正治療費が無駄になっちゃった。」「しなけりゃよかった。」「矯正治療何て意味無いじゃないの。」などと言った誤解は無くなると思います。

 【矯正歯科治療】に限らず、虫歯や歯周病の治療などでも「治療が終わったからもう大丈夫」と言うことでは、決してありません。
 くれぐれも、定期的な検診は欠かさないようにしましょう。



香西先生

 

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