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7.19.2001

No.0105

【20年間の秘密】と守秘義務

 コラムをお読みの皆さんに限らず、誰しも秘密の2つや3つお持ちの方は少なくないと思います。様々な秘密のなかでも、特に【健康上の秘密】をお持ちの方は居られますか?。
 そして、最も身近なご主人や奥様にこそ「この事だけは、決して知られたくはない。」とお考えの方は居られませんか?。
 今回は、そんな【健康上の秘密】にまつわるお話をコラムにしました。

 今年の6月初旬「歯槽膿漏が原因で下の前歯4本がぐらぐらになって、思うように食事ができなくなった。」と訴えて来院された壮年の女性の患者さんのお話です。

 お口の中を拝診すると、上あごには1本も歯がなく古そうな総入れ歯が入っていました。その入れ歯も市販の安定剤で辛うじてはめていると言った様子でした。その為か、その患者さんは「手放しで笑ったり、お口を大きく開けたりすることなど、間々成らない人生を約20年間もの長きに亘って送ってきたのだ。」と言うことでした。
 更に私が驚かされたことは、その約20年の間、入れ歯を外して歯茎の休息をゆっくりさせたことは無く、希に外す時は安定剤を取り替える時で、しかも誰にも知られぬようにこっそり行っていたそうです。
 お口と入れ歯自体の為のお手入れの為に、入れ歯は、部分入れ歯,総入れ歯に限らず、一日に何回も着脱はしていただくのが一般的なことです。
 しかし、この方はそうなさっていませんでした。
 「何でまた、20年もの間、こまめに入れ歯を外して清掃をしたりしなかったのだろう?。」 「具合の悪いときその都度、歯医者へ何故行かなかったのだろう?。」 と色々な疑問が私の脳裏を過りました。
 当然、その時にちゃんとそのわけを聞いておくべきくべきことだったのですが、その患者さんは、デンタルミラー(診察器具)をお口へ入れるだけでも‘びくびく’されて嘔吐をしそうになるしで「“子供よりも扱いにくい患者さん”だなー」と思い、ついつい必濃い質問は避けました。

 とにかく時間を掛けて、うち解けていこうと思い、入れ歯の修理と調整の為に通ってもらうことにしました そして2週間程が過ぎた何度目かの来院の日、いつものように入れ歯の調整をしていたところ、その患者さんが重い口を開いたのでした。

 「実は先生ね、私はね今から20年程前、夫の転勤先の歯医者さんで、下の左右に8本もの差し歯を痛い思いをさせられて入れたの。でも、間無しに、歯槽膿漏になっちゃってね。次から次とその歯がぐらぐらになってきたの。でも痛かった思いが枷となって歯医者さんにはいけなかったの。それで、思いあまって自分で歯を抜いたり、自然に脱落したりで、とうとう下の前歯6本しかなっちゃったの。」 ということでした。
 自分自身に情けなさがあり、ご主人や娘さん達には、『自分が入れ歯で奥歯がない』ということを【20年間の秘密】にしてしまったそうです。

 私達医療従事者には、患者さんのプライバシー『病気を口外しない』【守秘義務】というものがあります。この女性の場合は、自身が歯の無いことを家族に20年もの間、隠していた理由は、恐らく愛する夫から綺麗に見られたい、若く見られたいという思いからひた隠しにしていたのでしょう。
 しかし、7月の初めにご主人が虫歯の治療に当院へ来院された際に、「いつも家内がお世話になっております。上顎と下顎の入れ歯を作るのは大変でしょうけど宜しくお願いします。」と私に言われたのです。
 なんとご主人は最初から奥様の【20年間の秘密】をご存知だったわけですね。

 その後の来院の時に、私はご本人にこう言ってみました。 「ご主人も治療に来られるようになったことですし、【20年間の秘密】をご主人へさり気なく話されてみては如何ですか。」
 あの患者さんはご主人に【20年間の秘密】を打ち明けてみたそうです。あっさりと「20年前から知っていたよ。」とあっさり言われたそうです。

 【病は気から】と言いますが、自分自身で健康管理することも必要なことですが、家族の支えや理解、協力があって病気を克服できるのです。このケースの場合、ご主人の思い遣りがかえって歯科医院で診察する勇気を持てなかったとも考えられます。

 実は、私も7/13に喉の調子がおかしく夏風邪かと思い、抗生物質を自分で処方して服用しておりましたが、14日には高熱と声が出なくなり妻が強引に知人の医者へ連絡して来院せざる負えなくなり夕方に診ていただいた所、喉頭炎と診断され膿の切開と点滴で一命?を取り留めました。
 その後、妻の介護があって月曜日から何とか仕事ができると思うと妻に感謝すべきなのでしょうか?



山本先生

 

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